サブスクリプションを利用したネット配信などの普及で、より手軽に見られるようになった海外ドラマ。休日に一気見するのが楽しみ、という人も多いことでしょう。そんな海外ドラマの中には、ビジネスの場で役立つ交渉術を磨きたいと思ったときに参考になるものもあります。今回は、ビジネスマン必見の交渉術が学べる海外ドラマを5作品紹介しましょう。
SUITS/スーツ
『SUITS/スーツ』は2011年にアメリカで放送が開始され、世界中で人気を博している海外ドラマ。日本では2012年に初めてシーズン1が放送されて以降、現在もなおさまざまなサービスで閲覧可能です。また、2018年には織田裕二さん主演でリメイクもされ、2020年4月からは続編を放送予定という人気っぷり。
ドラマの舞台は、ニューヨークの大手法律事務所。若きエリート弁護士であるハーヴィー・スペクターの元に、学歴も弁護士資格も持たないマイク・ロスがアソシエイトの面接に訪れるところから物語は始まり、次々と依頼される難しい訴訟に挑んでいくストーリーが主軸となり、恋あり、仕事の駆け引きありと盛りだくさんな内容です。
学はないけれど天才的な頭脳で問題解決の糸口を見つけ出すマイク・ロスを、経験と知識で彼に勝るハーヴィー・スペクターが時に優しく、時に厳しく接しながら成長させていきます。
敏腕弁護士が一筋縄ではいかないクライアントや訴訟相手に繰り広げる交渉や営業シーンは、ビジネスの場でも参考になるところがたくさんあるでしょう。社外だけでなく部下と上司の関係性も濃く描かれているので、難しい営業や交渉に悩んでいるときに見ると、勇気づけられるかもしれません。
日本のリメイク版と交互に見て、アメリカと日本の交渉術の違いを比べてみるのも面白いですよ。現在はシーズン8が配信中で、ついに次のシーズン9で完結することが発表されました。ちなみに、シーズン7まで登場する主人公の恋人、レイチェルを演じているのがイギリス王室に嫁いだメーガン妃だというのは有名な話ですね。
THE MENTALIST/メンタリスト
『THE MENTALIST/メンタリスト』は、アメリカで2008年から2015年に放送されていたドラマで、シーズン7をもって完結しました。放送直後から高い人気を博し、2008年においては『LOST』や『24 -TWENTY FOUR-』といった人気ドラマを抜いて視聴者ランキングTOP10に選ばれました。日本では、2010年から放送が始まっています。
主人公のパトリック・ジェーンは、霊能力者(サイキック)を名乗る元詐欺師でしたが、妻と子どもを連続殺人犯に殺されたことをきっかけにカリフォルニア州捜査局(CBI)の犯罪コンサルタントになったという異色の経歴の持ち主。
元詐欺師らしく人間の心理を掌握することに長けた彼は、巧みな交渉術や話術で容疑者の懐に入り込み、持ち前の推理力で事件を解決に導きます。警戒心を抱いている人の心を巧みな話術でほぐしていく様子は、まるで敏腕営業マンのようです。交渉術のヒントもドラマ中にたくさんちりばめられていて、実践したくなりますよ。
シリーズ全体を通して大きな1つの話になっていますが、基本的には1話完結が多いので時間ができたときに少しずつ見ても、ストーリーが分からなくなることもありません。派手な銃撃戦などのシーンはありませんが、殺人犯と敏腕犯罪コンサルタントの静かな戦いは手に汗握ります。
クリミナル・マインド FBI行動分析課
『クリミナル・マインド FBI行動分析課』は、2005年からアメリカで放映が始まったドラマです。現在日本でもシーズン14まで放映されている長いシリーズですが、1話完結なので長編ドラマでありがちな「途中まで見たけれど、どういう話だったか忘れてしまった」ということもありません。
ストーリーは、FBI行動分析課が持ち込まれる殺人事件をチームで解決していくという日本の刑事ドラマとよく似たものです。ドラマ内では、犯人はもちろんのこと、FBIの上層部ともさまざまな駆け引きや交渉を行います。特に、FBI上層部との交渉術は、ビジネスマンでも参考になるものが多いことでしょう。一見して不利な状況を話術によってひっくり返すシーンは見ていてスカッとします。自分でもまねしたくなるかもしれません。
また、このドラマではラストシーンに古今東西の文学の一節、哲学者の明言などが朗読されるのですが、これもまたうんちくに役立ちます。これだけを紹介するTwitterアカウントもあるほど、世界中でも人気を博しています。犯人の心理が色濃く描かれているので、『羊たちの沈黙』や『セブン』といったちょっぴり怖い犯罪映画が好きな人にもおすすめです。
マインドハンター
『マインドハンター』は、前述の『セブン』の監督、デヴィッド・フィンチャー氏が製作総指揮を務めた(2020年2月時点でシーズン3は無期限製作保留)、Netflixのオリジナルドラマです。2017年にシーズン1が配信されて好評を博し、2019年にはシーズン2が配信されました。
ドラマの舞台は1970年代のアメリカで、プロファイラーである主人公ホールデン捜査官は猟奇的な殺人事件を解決しようとします。このドラマは、まるで殺人鬼と視聴者が実際に対話しているようなリアリティが大きな話題になりましたが、ビジネスマンが注目したいのは、逆境にめげない主人公たちの態度でしょう。
1970年代、プロファイリングはまだ一般的な捜査方法ではなく、歩き回って聞き込みをし、証拠を集めていく捜査方法が一般的でした。そのため、ホールデンたちも最初は同僚から半信半疑の目で見られており、協力を拒否されるシーンもたくさん出てきます。しかし、彼らはめげません。粘り強く周囲の人たちにプロファイリングの有効性を説明し、考えを変えさせていくのです。その根気強い交渉の有様を見ていると、勇気づけられること間違いなしです。「自分ももっとがんばろう」、「そうか、こうすれば相手の態度を変えることができるのだな」と思えるシーンが満載なので、難解な交渉の最中に見るとやる気が湧いてくるかもしれません。
シリコンバレー
『シリコンバレー』は、2014年にアメリカで放送が始まり、2019年にシーズン6をもって完結した海外ドラマです。気弱なオタクでコミュニケーション能力が今ひとつ、でも才能には恵まれているという主人公、リチャードが自分の開発したプログラムを活用して会社を興し、大きくしていく様子をコメディタッチで描いています。
ビジネスマンが活躍し、巧みな交渉術や営業力で厄介な相手と渡り合っていくというドラマでは、主人公が才能にあふれた自信家というパターンが多いものです。しかし、シリコンバレーの主人公であるリチャードは、才能こそあるものの奥手でコミュニケーション能力に欠けています。
いわゆる「等身大の主人公」ということで、共感できる点がたくさんあるのではないでしょうか。彼は、自分に欠けている能力を補うために、さまざまな方法で仲間を集め、共に会社を大きくしていきますが、その仲間たちも一筋縄ではいかない人ばかりです。人よりはるかに優れた面がある一方で、不得意なことはとことん不得意という、これもまた「こんな人、自分の周りにもいる」とうなずいてしまいそうです。
このドラマの見所は、くせのある仲間たちが協力し合って会社を立ちあげ、大きくしていく過程です。ドラマの中で描かれるIT会社の様子やネットサービスはモデルがあったり実在していたりするものが多く、シリコンバレーに住む視聴者の中には、「うちの会社でもこんなことあったな」としみじみしてしまう人もいるとか。
そのくらい現実的な演出であれば、会社やクライアントとの交渉シーンも参考になることが多いでしょう。「天才の交渉術なんて参考にならない」と考えている人も、このドラマなら「なるほど、こうすればいいのか」と思えるのではないでしょうか。また、コメディシーンが多いので見終わった後に気持ちが軽やかになるところも魅力です。
海外ドラマを楽しみながら交渉術を学ぼう
世界中で人気のある海外ドラマはストーリーが重厚で内容も盛りだくさんです。見方を変えて楽しむことができるので、1度目は娯楽作品として、2度目は交渉術の参考として見てもいいでしょう。ビジネス書を読むより参考になるかもしれません。